約3割の人はゴリラを見落とす
ニュースでスマホ等に注視していたために起こる事故は後を絶ちません。
歩きスマホや自動車を運転中のスマホ操作は、なぜなくならないのでしょうか。
スマホ注視に限らず、ちょっとした不注意で起こる事故は様々な原因がありますが、その一つに「錯覚」があります。
錯覚は人間が生きていくために必要な能力の副産物です。
正しく知ることで能力を活用できるようにもなりますし、ちょっとした油断で大切な人の命を奪うことも減らせるはずです。
今回のテーマは「錯覚」
自分は大丈夫だと思っているそこのあなた。
すぐそばに錯覚が忍び寄っていることにお気づきですか?
今回参考にさせていただきました本はこちらになります。
「錯覚の科学」
著者:クリストファー・チャブリス ダニエル・シモンズ
翻訳:木村博江
出版社:文藝春秋
目の前にある物でも見落とす可能性がある
まずは、YouTubeでも公開されているこちらのテスト動画をご覧ください。
白い服を着た人が何回パスをするか数えるテストです。
答えは15回。
しかし、この動画はパスを正確にカウントすることを目的としていません。
動画の中にはある不自然な出来事が起こったのですが、あなたは気付きましたか?
では、もう一度最初から動画を再生し、今度はパスを数えず画面に集中してみてください。
どうですか? 今度ははっきり見えましたか?
そうです。動画の中でゴリラが画面を横切っていたのです。
しかも中央でいったん止まり、胸を叩いています。
こんなに目立つ異変に気づかなかったとショックを受ける方もいるかもしれません😅
ところが、この動画を使った実験では、約3割の人がゴリラを見落としていました。
画面の大きな変化に比べて、3割という数字は決して少なくないと私は考えます。
自分は目の前で起こる出来事を漏らさず正確に捉え記憶することができる
こういった思い込みが信じがたい錯覚を引き起こします。
ケータイで通話中、9割の人がゴリラを見落とす
先程のゴリラの動画を、今度は誰かと通話しながらテストしてみましょう。
スマホやケータイで話しながら動画を見た場合、なんと約9割の人がゴリラを見落としました。
何もせずに動画に集中していたときの3倍です。
運転中の通話は相手の状況が見えないために、会話を続けなければならないという心理的な要求で注意が会話に集中してしまいます。
だからゴリラを見落とす確率が跳ね上がったんですね😱
ただし、助手席に座っている人と話しても注意力はあまり削がれないそうです。
難しい運転技術が必要なときは隣の人が察してくれて会話を中断しますし、何かが飛び出してきても隣の人が気づいてくれるかもしれないからです。
さて、この実験結果を見ても、運転中にスマホを注視しようと思う人はいるのでしょうか🤔
運転中の通話や電子機器類の注視は、自殺行為といっても過言ではありません。
頭ではわかっていても、ついつい見てしまうという人も多いかと思います。
自分の注意力の限界を自分で把握している人は少なく、つい油断してしまうからです。
では、どうすればいいのでしょうか。
見落としたものを意識するのは不可能
当たり前の話ですが、意識していないものを自覚するのは不可能です。
「相手が急に飛び出してきた」「信号は青だった」と証言するドライバーの多くは、自分がミスを犯していることに気づいていないことがあります。
実際、ドライブレコーダーや防犯カメラで確認してみると、ドライバーの不注意で事故が起こってしまったケースはよくあります。
人間の反応速度は通常、自分の歩く速度に合わせています。
時速60kmで運転しているときの一瞬の不注意は、相手や自分の命を脅かす危険性をはらんでいます😣
こういった見落としをゼロにすることは難しいですが、ゼロに近づけることはできます。
錯覚とは自分の不注意ではなく、能力の限界を知らないことで起こるものだと自覚すること。
スマホや携帯電話などの機器類を、操作できないように物理的に遠ざけるなどですね。
ただ、これらの錯覚は我々人間が自然界で生活していたときの名残ともいえます。
物事に集中できるから何かを見落としてしまう。
限られた集中力で何かを遂行するというのは、我々が生きる上で必要な能力なはずです。
錯覚を完全に防ぐには
自分は大丈夫という思い込みを意識的に排除するというのは一つの方法ではあります。
しかし、それだけでは弱いです。
錯覚は無意識に働くものなのでコントロ―ルすることは難しいです。
認知能力を鍛えるという方法もありますが、これも錯覚を完全にゼロにすることは難しいでしょう😣
今は人の動きを感知してブレーキをかける自動車が増えてきています。
こうしたテクノロジーは事故をある程度抑制してくれますが、錯覚を排除することとはまた話が別です。
錯覚という心の動きを完全にコントロールすることは難しく、私たちが何か行動を起こすときには必ずついて回ります。
前述のように、能力の限界を知り、運転中の注意を逸らすもの(スマホや大音量の音楽)を遠ざけることで運転に集中しましょう。
最後に
自分に限ってそんな事故は起こさないという思い込みが、錯覚の原因の一つだということがわかりました。
そもそも、事故は滅多に起こらないため、安全運転の心構えをキープするのは難しいんですよね。
事故が起きてから自分の不注意を悔やんでも遅いのです。
暗い夜道でライトも点けず、スマホを操作しながら自転車に乗っている人を見ると、いたたまられない気持ちになります😢
相手のためにも、自分のためにも、注意を逸らしそうな誘惑に打ち勝つ心持ちで安全運転を徹底しましょう。